橙色~プロローグ(第一部)

8/8

153人が本棚に入れています
本棚に追加
/148ページ
「来週からテストあってさぁ、中学入ったばっかなのにやってらんないよね?マジ死にてぇ。」 この時僕は、特に気にせず「死にたい」と言った。 確かに僕くらいの年齢の人達は深い意味も無く、「死ぬ」とか「死ね」という言葉を使っていた。 僕も「普通」に言ったつもりだった。 「死にたいの?」 彼女は、映画を見ていた時のあの表情だった。 「孝秋は死にたいの?」 「え?いや、普通に言っただけじゃん?本当に死にてぇ訳じゃ…」 慌てて説明する僕が言い終わるより先に、 「死ぬのに普通も異常も無いでしょ?いらないのなら私にちょうだいよ…」 最後の方は、小さな声で、だけどはっきりそう言った。 僕は、言われた言葉の意味を探しながら、立ち尽くしていた。 それから彼女は、何も言わずに僕の前から消えていたんだ。 立ち尽くしいる僕は、電車の時間がくるまで、瀬田 雅の事ばかり考えていた。 こうして、僕は雅と出会った…
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

153人が本棚に入れています
本棚に追加