二十歳。彼女なし。今の俺。

2/6
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 くそ田舎のでっかい山を大学側が買い占め、これまたでっかい規模の大学を建設したもんだから、端から端までの距離は相当ある。敷地内を一周するだけで、しかもチャリで漕いでいるにも関わらず、裕に三十分はかかる。歩けばもっとかかる。多分、一時間くらい。実際歩いたことはないが、想像しただけで疲れたのだから、歩いたら多分死ぬほど疲れる。下手したら死ぬ、かも。  海からは遠く、辺りは山ばっかりだ。木の臭いしかしない。乾いた、鼻をくすぐるような臭い。案外嫌いなもんじゃない。といっても、俺は海の近くでそだったから、やっぱり海の臭いが一番好きだが。それでもここは空気がおいしかった。風邪ひいても、すぐに治りそうなくらいにきれいだった。澄んでいた。清かった。俺は、この空気が好きだった。  一番近くの街からも、ここは相当離れた山の奥地だ。詳しくは知らないが、約二十年くらい前にこの大学ができたらしい。そして当時、今でもくそ田舎なのに、それとは比べられないほど田舎だったらしい。一説では山しかなかったとも聞いている。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!