桃の狂香

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クラッツのイベントについての舞台裏小説。 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」 暗い淀みの底で、頭を抱えて小さくなりながら、ずっと謝罪を繰り返す。 目を瞑れば、瞼の裏に赤がこびり付いて離れない。 「俺が…、俺のせいで…!」 両手のひらを見つめても、そこには何もない。しかし確かに濡れた血液がそこに滴ったのだ。 桃の香りが噎せかえるほどに充満する。 もう一度、狂ってしまえ。と諸手を招く。 その手に手を伸ばす、 「何処行くの。」 気が付くと、目の前には包帯を顔や腕、全身いたるところに巻いたオルガが立っていて、腕を掴んでいた。 「君はこっち側じゃないでしょ。行かなくて良いんだよ。」 片目をガーゼと包帯で覆われながらも、オルガは碧の目で射抜いてくる。 その強気な顔も、細い体も傷付けたのは…、 「い、いやだぁぁあ!ごめんなさいごめんなさいぃ!」 目を固く閉じる。両腕を頭に巻き付け、何も聞こえないように耳を塞ぐ。 「お前が気に病む必要はない。」 腕を引かれた。強い力は抵抗なんて許さずに、あっさりと視覚と聴覚を再起動させる。 「大丈夫だ。これぐらいじゃ、死なない」 「当たり前だよ。私達は生きてるんだし」 「い、生きてる…?」 思わず、口から零れ出た。  
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