桃の狂香

3/4
前へ
/26ページ
次へ
「やる事を残して死ねる訳あるか」 「っていうか君ごときに私達が殺せるわけないよー」 口々に悪態を付くオルガと摧理。顔をしかめる所はそっくりな彼等は、やがて互いに向けて文句を付け始めた。 「別に君は死んでも良かったよ、摧理。むしろくたばれ。」 「口が悪いな。もう一度教え直した方が良いか?」 「嫌だね!君の授業は二度と受けたくない。」 「私の教えを受けれるなんて幸せ者だぞ、お前は。」 クラッツをほっといて始まる口喧嘩に、呆然としてると、背後にちりん、と鈴の音が鳴った。 「彼奴等は放っておきなよ。」 振り向けば、破けてボロボロの服を着ているにも関わらず、いつもの余裕の笑みで微笑む八鹿が立っていた。 「ねぇ、こちらに来るのはもう少し後で良いんじゃない?」 「ちょっと八鹿!今だろうと後だろうと、クラッツはこっちに来なくていいの!」 八鹿が目の前でしゃがんで喋りだすと、喧嘩中だったはずのオルガが後ろから怒鳴る。 それに肩を竦めるも、八鹿はまた口を開いた。 「兎に角、君はこちらに要らない。他の誰かが何を言おうと、俺達三人は認めないよ。」 だから、起きなさい。 ゆっくり告げられたその言葉は、染み入るように心の中へ入っていき波紋を広げた。  
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加