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光の竜神、パルファムの庇護のもと、平和の為に日々頭を働かせていた。
書類を整理するだけならまだ良い、最近は剣を腰に下げるようになっていた。他勢力の不穏な動きが目立つようになってきたのだ。
この切っ先を誰かに向ける日が来なければ良いのだが、この世界でそう上手くいくはずがなかった。
他勢力が、光の教団が治めている範囲内に進軍してきた。
その報せは瞬く間に教団内を震撼させた。
緊迫した空気の中、彼は剣の柄を強く掴んで、命を下した。
――迎撃を、
負けるわけにはいかない。相手にも理由があるにせよ、こちらにも退けない理由があるのだから。
平和の為に、
剣を揺るがすまい、と、何度も柄を握り直し、戦火の中を駆けた。
向かう者に黒い刃をその身に沈め、またひとつ、切り伏せた。
いつ終わったのか分からない。
気が付けば辺りは静まり返っていて、重なる死体の中、立っているのは自分だけだった。
遠くに無数の呻き声が聞こえるが、誰の声かは判別出来ない。
何度、人を斬っただろうか。
何度、己の体が斬られただろうか。
剣も体も血を浴びて、真っ赤になっていた。
天を仰いで、目に映る濁り曇った黒い空。
この曇天じゃ、死んだ者達は星にはなれないだろうな。とか馬鹿な事を考えた。
(そこに広がったのは有でも無でもなく、)
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