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オルガは扉にトン、と背中を預ける。
待てば、数秒も経たないうちに摧理は口を開いた。
「殺したのか?」
「殺したよ、スッパリね。あんまり痛み感じる前に死んじゃったと思うよ?」
あっけらかんと聞かれたことを報告すれば、部屋の雰囲気が重くなった気がする。
それなら聞かなきゃ良いのに、また出そうになる溜め息を飲み込む。
しばらく間が空いたと思ったら、ポツリ彼は呟いた。
「…あまり殺すな。」
この時壁を殴って大破させなかった自分を褒めてやりたい。
「分かった。もう闘いに参加出来ないぐらいズタボロにして首の皮一枚繋がってる状態で勘弁してあげるよ。」
そう言って直ぐに、オルガは、結局一度も顔を上げなかった上司の部屋を出た。
彼は“何故殺さねばならないか“という理由を考えない。
“殺す“理由ばかり求める阿呆だ。
「だからあんなクソ上司大っ嫌いなんだ。」
誰も居ない廊下を靴を鳴らして進むオルガに、いつもの笑みは無く、ただ瞳だけが感情を持ったように鋭く光った。
独りになった執務室で、摧理は閉まった扉を黒い瞳で見る。
いつもより眉間の皺を増やし、独り言を呟く。
「やはり貴様は“光“の教団には向いていない。」
彼はまだ、彼女の口癖にある本当の意味を知らない。
saika、(私こそ“愛“に相応しい)
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