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もう少し起き上がって、ロノを見ると、半ばで折れた棒を片手に持ち、槍というよりは、剣のように構える
「ロノ…!ダメ!そいつ、ただの岩の塊じゃない!」
「…わかりました!」
踵を返したロノはユーリフの服の襟を掴み、距離を取る
少しズボンを擦っていたが、微塵も気にならない
やはり追いかけてくる怪物と向かい合い、微かに動く口と精神力を使い、水術を放つ
動きが鈍いため、直撃するものの、まったくダメージを与えられていないようだ
意識が朦朧とする
無理をしたか
「ユーリフちゃん!しっかりしてください!」
ロノに喝を入れられ、一瞬、意識が鮮明になるものの、またすぐに重くなる
その時、怪物の動きが止まった
前を見ているロノにはわからないが、頭を同じ方に向けているけれども、うなだれているユーリフにはよくわかった
―――…なに…?
怪物は右手を地面と水平に持ち上げ、足を開く
そして、右手を、発射した
「ロノ!」
ただならぬ叫びに、ロノは後ろを振り向く
直後、彼女の肩に、重い衝撃が当たる
「きゃあぁぁっ!」
「んうぅっ!」
ロノが吹き飛ばされると同時に、彼女に掴まれていたユーリフも、同じように吹き飛ばされる
二人共、したたかに体を壁にたたき付けられ、くぐもった悲鳴を上げる
鈍い金属音がしたと思うと、ユーリフ達を吹き飛ばした岩が、まるで操られているかのように怪物の右手に戻っていく
―――…何…あれ…
「くっ…ユー、リフ…ちゃん…」
ロノが震える手を伸ばすが、ユーリフにはその手を掴むことすら出来ない
もう、動かない
体が、一切の命令を無視する
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