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―――…何よ…私の体なのに…腕なのに…足なのに…どうして動かないのよ…
そこで、もう喋る力すら無いことを知る
舌打ちすら出来ない
ロノも、気絶とまではいかないが、かなりのダメージを受けているようだ
八方塞がり
為す術が無くなってしまった
未だ正常に機能している神経に伝わる振動で、怪物が近づいているのがわかる
―――…なんだ…意外とあっけないわね…死に様なんて、考えたこともなかったけど、いざその場面に遭遇すると、拍子抜けするくらい、なんてことないのね…
ふっ、と微かに唇を持ち上げて笑う
―――これじゃ…ジュンに笑われるわね…
なにもわかりはしない
わかりはしないが、怪物の腕が持ち上げられる気がした
あぁ、これで死ぬんだ、とあっさり事実を受け入れた
もう、無駄だと
「うあぁぁぁぁぁぁ!」
誰かの叫び声
轟音
―――…何…?
程なくして、淡い風と共に薄れかけていた意識が、積み木を重ねるように元に戻ってくる
ロノの回復術だと気付くのに、少し時間がかかった
手が震えながらも地面を掴み、体を持ち上げる
そして、見た
岩の塊と対峙する、青年の姿を
○
どうしてこんなことになったのだろう
どうして自分はこんな所にいるのだろう
冷静さを欠いていた
そう言えばそれまでだ
ならもっと確固とした理由があるのか
はっきりとはしていないが、朧げに、けれども、たしかにそこにあるとわかっている
それを完全にわかるにはしばらく時間がかかるだろう
だが、それよりも先に、この岩の怪物に対して、今、どうしても言わなければならないことがある
淳は、鋭い目で怪物を睨む
「二人から…離れろ」
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