暗き洞にて

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―――よし!後は… 手に持った爆竹をまとめ、束にすると、ライターと同じ原理の小型発火装置を取り出す 怪物の左腕が振りかぶられる直前に、淳の足は、怪物の膝を、腰を、胸を踏み、肩にまで登る そして、首と言えるであろう箇所に爆竹をねじ込む 導火線を掴み、発火装置のスイッチを入れる いやに、時の流れが遅く感じる 装置から出る火さえ、ゆらめいているのがよくわかる だが、今はこの現象の理由を考えている場合ではない 「く、ら、えぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 導火線に火が点く それから間もなく、怪物の体を蹴り、離れる 直後、巨大な破裂音 爆破した 怪物はふらつき、ゆっくりと、重苦しく、仰向けに倒れる 勝った と言えるのか いや、そんなことよりも 「ユーリフ!ロノ!」 「どいてなさい!」 ユーリフのかすれた怒号 それと同時に、淳の体が強張る そして、腹に、大きな、重い衝撃が伝わる ―――え… 岩石が、淳の腹に打ち込まれている 見覚えがある 怪物の、足 「やっぱり…まだ…!」 微かに見えたユーリフの顔は 歯を食いしばり、前に突き出した右手を、左手で押さえていた そして、怪物がゆっくりと立ち上がる 淳を一瞥し、ユーリフに向き直る ずん、と音が響く 危ない このままでは 「ユーリフ!」 叫んだ 返事は無い 代わりに、荘厳な声が耳に届く 「猛る奔流、飲み込め…」 暗い洞窟が、青白い光に包まれる そして、激しい音と共に、超多量の水がユーリフの手から放たれる
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