881人が本棚に入れています
本棚に追加
押し寄せる大量の水は、重い怪物の体をのけ反らせ、反撃の隙を与えない
「ジュン!早くそこから離れなさい!」
また、怒号が飛ぶ
しかし、淳の目は怪物を見ている
「ジュン!何を」
「人だ…」
ぴく、とユーリフの耳が動く
「人だ…ユーリフ!人が中にいる!」
「なんですって!?」
―――どういうこと…?このモンスターに捕われている…?
ふと、あることを思い出す
―――…そうか…それなら…合点がいく!
ユーリフは右手を上下に振り、水流を操る
水は大きくうねり、爆竹により、怪物の破損した首元へと入っていく
すると、怪物の岩だらけの体のあちこちから、水が漏れている
徐々に、鉄が軋む音が聞こえてくる
それが怪物の物だと気付くのに、さほど時間はかからなかった
やがて、人型に近い体を形作っていた岩は、ボトボトと落ち、まるで積み木を崩したように、その場に積み上がる
そして、中から気絶したのだろう、目を閉じた人が現れる
直後、ユーリフも膝から崩れる
二十歳前後の女性だ
その目元や頬に、見覚えのあるペインティングがあった
女性は一度、多量の水を吐くと、仰向けに倒れた
それを、淳が受け止める
「もしもし!大丈夫ですか!?」
揺さぶり、頭に触れても、何の反応もない
―――…最近、こんなのばっかりだ!
淳は女性を背負い、改めてその顔を見る
やはり、と思い、ユーリフとロノに向き直る
「ねぇ、二人共、ノイスのお姉さんって、やっぱりレタナ族だよね?」
憔悴しているユーリフに代わって、ロノが前に進み出る
「はい、多分…それに、その顔の模様は…ノイスちゃんの模様にそっくりです」
ロノの意見を聞いて、淳は頷く
最初のコメントを投稿しよう!