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ロノは二人の回復を急いだ
ユーリフはともかく、女性の方はまだ目を覚まさない
しかし、ユーリフの憔悴は治癒術をもってしても回復が出来ない物だ、とロノが教えてくれた
「ユーリフちゃんは、強力な魔術を使ってしまったんです、だから、これは体力的な疲労ではなく、精神的な疲労なんです」
「そんな…、それじゃあ、すぐには治らないの?」
ロノは残念そうに頷く
もう一度、ユーリフを見下ろす
目は開いているものの、おそらく、視界がはっきりしていないのだろう、真上を向いたまま、瞳は少しも動かない
「…ぅ…」
聞いたことの無い声
「あ!淳さん!目を覚ましました!」
「うん!」
すぐさま、女性の元へ寄る
「もしもし?私達がわかりますか?」
「…ぁ…ノイ…ス…?」
女性は体を起こすと、辺りを見回す
「ノイス…は…?」
ロノは女性の肩を控えめに叩いて、自分に意識を向かせる
「大丈夫です、ノイスちゃんは私達が保護しています」
「…保護…?…おまえ達は…?」
名を聞かれ、ロノの表情が、ぱぁ、と明るくなる
「私達は…」
「僕達は、リヒト・レーゲンというチームです」
ロノは目に見えて落ち込む
台詞を奪ってしまったのは申し訳なく思うが、あの紹介をする気にはなれない
「…リヒト…?いや、それより、ノイスは無事なのか?」
それより、と言われ、ロノはショックを受ける
「大丈夫です、妹さんは無事です」
「…そうか…よかった」
女性は心の底から安心したように、息を吐き、思い出したように淳に向き直る
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