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「…それは…俺にもよくわからない…」
「わからない?」
「いえ、淳さん、不思議ではありません、何しろ、『能力』の暴発は、個人の意思で起こるとは限りませんから」
淳は首だけをロノに向ける
「どういうこと?」
「淳さんの世界ではわかりませんが、ガナト・ヴィスンでは、人の脳の研究が進んでいるんです、特に、ウォーガで」
脳の研究
ガナト・ヴィスンでも、地球と同じような研究や実験が行われているのだろうか
「その中で、人間は、無意識の内に力をセーブしている、ということが確認されたんです」
やはり、地球と同じ結果だ
軍隊の武器と言い、今の話と言い、ガナト・ヴィスンは祖父がいない間に、とんでもない進化を遂げたらしい
「…ュンさん?聞いてますか?」
声と共に、細い手が視界の中で揺れる
「あぁ、ごめん、聞いてなかった」
「えっと、それじゃあ、研究のおかげで、人間は力を無意識にセー」
「あ、そこまでは聞いた」
「…ブしてるのがわかったんです」
止まらず、話を続けてくれた
「だから、『能力』も、意識的に全力が出せないんです」
その原理はわかっている
地球でだって、体に見合わない力は、なかなか出すことは出来ない
「でも、とても大きな精神の高ぶりがあったら、私達は『能力』をコントロール出来なくなることがあるんです、『暴発』の原因は、だいたいそれです」
なるほど、と淳は頷く
ジェダにも、何か異常があって、そんなことになったのかもしれない
「お嬢さんら、もうすぐ王都だぜ」
御者の男性が、間もなく到着することを知らせてくれる
「あ…じゃあ降りる準備しなきゃ」
淳は荷物を担ぎ、ジェダにも手を伸ばす
しかし、手で制された
「大丈夫だ、もう立てる」
そう言って、彼女は足を震わせながらも立ち上がる
淳は微笑み、よかった、と安堵の息を吐く
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