暗き洞にて

29/30
881人が本棚に入れています
本棚に追加
/1039ページ
ユーリフをハウスへと連れていった後、ロノが看てくれるというので、淳はジェダを連れて、彼女の家に赴く まだ体調が万全でないため、休みを頻繁に挟んだが、日が暮れる前には着くことが出来た ジェダとノイスが住んでいるであろう家は、同じ賃貸ながら、リヒト・レーゲンのハウスよりも、だいぶ小さかった それに、木造で、建てられてから、ずいぶん長い年月が経っていることは容易に想像出来た 中に入ると、暖かい光が目に入る ドアが開いた音に気付いたのだろう、テーブルの椅子に着いていた少女が、派手な音を立てて、立ち上がる 「お姉ちゃん!」 「ノイス…!」 ジェダは抱き着いてきた妹を、少し後退しつつも、しっかりと受け止める 「お姉ちゃん、お姉ちゃん…よかった…」 胸の中で泣きじゃくる妹の頭を、姉の細い手が優しく撫でる 「心配かけて…すまなかった」 「うっ…うっ…ずすっ」 鼻をすすったノイスが、ジェダの横から顔を出して、淳を見る 「…リヒト・レーゲンのお兄さん…ありがとう」 ぽつり、と感謝の言葉を口に出したノイスに倣うように、ジェダも振り返り、淳に向き直る 「俺からも、改めて礼を言う…ありがとう」 姉妹から同時に感謝の言葉を受け取って、淳は照れ臭そうに頬を掻く 「い、いやぁ…でも、無事でよかった」 笑顔で二人と握手をすると、それじゃあ、と言って、踵を返す 「…もしも」 ぴた、と足を止め、振り返る 「…必要な時は、いつでも来てくれ、出来る限り、力を貸そう」 意外な申し出に、淳は少し呆けるも、すぐに、ありがとう、と頭を下げた
/1039ページ

最初のコメントを投稿しよう!