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ジェダ達の家を出て、淳は真っすぐハウスへと向かう
日は世界を赤で染め、鮮やかな景色を作り出す
思わず、見とれた
今だけは、街の人々の喧騒が気にならない
夕日がコリュミーナ峠に沈むのを見ていた
綺麗だ
こういったところは、地球となんら変わらない
「…夕日、か…」
『いつか、もう一度、この世界に来れたら…』
「え?」
誰かの声がした
喧騒はまるで耳に入らないのに、その声だけは、やけにはっきりと聞こえた
『その時…は…』
声はだんだんと小さくなっていって、やがて消えてしまった
何故だろうか、自分に語りかけているような、そんな気がした
「…もう一度…?」
ずいぶん引っ掛かる言葉だ
しかし、唐突に聞こえた声に、懐かしさがあった
どこかで聞いたような、久しい声
どこで聞いたのだろうか
明確な答えが出ないまま、淳はハウスに着いていた
「…ま、いいか、ただいま~」
○
「陛下、どうされました?」
「…え?」
気が付くと、大臣が目の前にいた
「お顔色が、ひどく優れないようですが…」
「…大事ありません、少し、昔のことを…」
「…そうですか、あまりご無理はなさらずに」
大臣はそう言うと、玉座の間から立ち去った
おおかた、政務の資料でもまとめるのだろう
メルベリッサは椅子に座り直し、ため息をつく
―――また、あの夢…
『いつか、もう一度…』
「…でも貴方は結局来てくれなかった…貴方は、死んでしまった…」
彼女は自分の手を見つめて、静かに目を閉じた
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