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完全に硬直した淳は、背後で、気絶したはずのイブニングが体勢を立て直していることにさえ、気付かなかった
「HA!無事か、イブニング!」
クラッチの問いには応えず、イブニングは首をひねり、鳴らす
そして、淳の頭に銃口を向ける
「イブニング」
マントの女性の声で、銃は下ろされるが、代わり、と言うように、傍らのロノに銃を突き付ける
それを確認して、マントの女性は淳に向き直る
「…訪問者、行動力には感心するが、判断力は著しく乏しいな」
あとほんの少し、力を入れれば極められるユーリフ
銃を突き付けられたロノ
なんだこれは
どうして、こうなった
「今度こそ、懸命な判断をしてもらう…決断出来ないのであれば、我々が力を貸してもいい…」
「…っ!…ジュン…ここでついて行って、あんたが無事だとは限らない!あんただけでも逃、かっ…」
クラッチの手に、力が込められる
同時に、ユーリフの顔が赤みを帯びていく
「やめろ!」
前に一歩踏み出す
タン
銃声
即座に振り返る
だが、銃弾はロノの脇の石畳を穿っただけで、彼女自身に足以上の怪我は無い
「…わかったかな、『力を貸す』ことの意味が」
どうして
どうしてこんなことに
どうしてユーリフやロノが苦しまなければいけない
自分が、たった一つ、決断すれば、彼女達はこれ以上傷つかなくて済む
自分の身の事など知らない
二人が助かれば、それでいい
「…パダ」
淳の顔に、これ以上の抵抗の可能性の皆無を見たマントの女性は、鎖を持った女性を促す
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