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あぁ、と美女は両手を広げる
「そもそも、諸君の敗因は、私達に時間を与えたことと、身近なミスだ」
「…敗因?」
何が敗因なのだろうか
「…つまらんな、そんな下手な駆け引きでは、我々の隙は生めない」
「隙?もう生まれているだろう?」
ぴく、とツァイコフの耳が揺れる
「私が現れた瞬間に」
「…何?」
それに、と美女は続ける
「隙を突くのは私ではないよ?」
「…………!」
気付いた
が
「もう遅い」
「クラッチ!その女」
ピン、と何かが弾かれるような音
直後、驚異的な量の水が石畳から吹き出す
にや、と美女が意地悪な笑みを浮かべる
「やるがいい!大人少女!」
ドン、と間欠泉のような熱湯が、巨大な水柱となって溢れ、ウロヴォロスのメンバーを飲み込む
だが、指向性があるらしく、リヒト・レーゲンの三人と、黒い美女の所にだけ、筒状の空間が空く
「ほう、軽く炎も入れたか、少し見ない間に成長したのだね」
くすくす、と笑う美女だが、淳の中にはいくつか疑問が残る
と、間欠泉の中から、手が飛び出し、美女のコートを掴む
その瞬間、淳が身構えたが、美女はなおも笑っている
間欠泉の柱が割け、コートを握った手の主が見える
息を荒げたユーリフがその場に膝をつく
「ユーリフ!」
すぐに介抱しようとするが、手で制止される
「…ロノ、は…?」
淳も、はっ、と気付き、振り返る
既にその勢いを弱めた間欠泉は、倒れている仲間の位置を正確に示している
―――あの穴か!
すぐさま駆け寄る
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