一路、東の国へ

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「『皇』、つまり、我らが陛下は、二年前にこの世を去られた」 ユーリフではなくニヒトが説明を始める もちろん、歩きながらだが 「病でも暗殺でもない、単なる老衰だが、嫡子に恵まれなかった陛下は、逝く前に新たな『皇』を決めようとなさったが、その想い半ばで亡くなってしまった」 「子供がいないのに、新しい『皇』を?」 「別段、不思議なことではないさ、世界で最初に王と呼ばれた人間の親は王ではなかったのだから」 なるほど、と納得する だが、とニヒトは続ける 「陛下が『皇』を決めなかったことにより、『皇』になるだろう、と言われていた、養子のアカネ様、カイエン将軍が睨み合ってしまってな、現在、センタイは不安定も不安定だ」 世継ぎ争い 漫画やドラマでしか見たことの無い、苦い争いがある 「こんなに綺麗な所なのに…」 見回すと、緑が一面に広がる どこを向いてもだ それが、今向かっている街では、何の利益になるのかわからない争いが起こっている 「…世界とは、そういう物だよ、少年」 「…そうだとしたら、ここも地球も同じだよ、戦って、傷付けて、何の得があるんだろうね」 自分で言ってて、哀れに思えてきた 同時に、少し落胆もした ガナト・ヴィスンも地球も、嫌な所が似ていたことに 「でも、ジュン、あんたには関係ないことなのよ?そこまで思い詰めることないじゃない」 いつの間にか並行していたユーリフに軽く喝を入れられるが、どうも納得がいかない 「…関係ない…か…」 ぽつりと呟いた 直後、誰かが笑ったような気がしたが、センタイの入口が見えてきたことにより、忘れた
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