その高校生、赴く

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ある晴れた日 高校生の陸上記録会 三年生は、最後の記録会というだけあってか、全員それなりに真剣だ そして 佐久間 淳(サクマ ジュン) 彼もまた、そんな三年生の一人だ ただいま、持久走の真っ最中である 疲れを感じない、不思議な体質のおかげで、なんとか1500m、5分を切った 「ひゅー、淳さん、やるねー」 「やっぱすげぇな、淳」 友人達が、次々とそんなことを言ってくれる 「いや、あんまり…実感ないよ」 「あ~、謙遜すんなって…あ、ほら、女の子の群れが来たぜ」 「え」 「じゃあな、先に避難しとくわ」 「あ、ちょ…」 物凄いスピードでどこかへ行ってしまった そのかわり、物凄いスピードでどこからともなくやってくる 女子(学年不問) 「佐久間君!お疲れ様!」 「いや、疲れてな…」 「佐久間先輩!濡れタオルです!」 「あ、ありが…」 「ちょっと!二年は後ろの方に行きなさいよ!」 「あ、ちょっ!何すんですかぁ!」 「佐久間君は同級生の私達に優しいのよ、ね~」 ぎゅ、と腕に抱き着かれる 「あ、今ちょっと汗かいてるから…」 「あれだけ速くって、汗ちょっとしかかかないのはすごいよ?」 「う…う~…ん」 そう言われても、イマイチぴんと来ない すると、さっき弾かれた二年生の子が、今、淳に抱き着いている三年生の腕を掴む 当然、三年生の子は怒る 「あっ、ちょっ、何するのよ!」 「何するのじゃありません!佐久間先輩が困ってるじゃないですか!」 「え~、困ってないよ、ね~、佐久間君?」 急に話をふられ、当然困惑する 「え、いや、えっと…」
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