881人が本棚に入れています
本棚に追加
「え…」
「あの子、私だけと暮らしてた時は、こんな我が儘言わなかったもの」
ユーリフは足元にまとめてある荷物に視線を向ける
「私とロノの二人がかりでも、この量の荷物を持って移動するなんてことは無理…だから必然的に大量の買い物はしなくなったの」
そりゃあ女の子二人だけだから、こんなに重い物はなかなか持てないだろう
「だからあなたが来て、こんなことが出来るようになった…今まで、ずっと我慢してたみたいだから、すごく気持ち良いでしょうね」
なるほど、たしかに男手があるならば、これはできるだろう
だが
「…え?」
と言うと、ユーリフは目を丸くする
「え?私、なんか余計なこと言った?」
「ん、いや、なんか…」
淳が口ごもっていると、ロノが戻ってきた
彼女が振る度に水筒はみずみずしい音を立てている
「持ってきましたよ、お水!ジュンさん、どうぞ」
半ば押し付けられるように水筒を渡される
早く飲んで疲れを紛らわさせろということだろうか
元いた世界の物とそう変わらない水筒は、フタを開けて、口を付ける
…のはさすがにやめて、少し口から離して、落とすように水を飲む
冷たい水が喉を潤す
「はあ…美味しい」
隣でユーリフがくすりと笑う
「大袈裟ね、所詮は給水所の水でしょ?」
「いや、それでも美味しいよ」
その様子を見て、ロノも微笑む
しばらくすると、水筒の中は半分程飲み干されていた
思わず多めに飲んでしまったが、咎められはしなかった
最初のコメントを投稿しよう!