薔薇の十字架

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「え…」 「あの子、私だけと暮らしてた時は、こんな我が儘言わなかったもの」 ユーリフは足元にまとめてある荷物に視線を向ける 「私とロノの二人がかりでも、この量の荷物を持って移動するなんてことは無理…だから必然的に大量の買い物はしなくなったの」 そりゃあ女の子二人だけだから、こんなに重い物はなかなか持てないだろう 「だからあなたが来て、こんなことが出来るようになった…今まで、ずっと我慢してたみたいだから、すごく気持ち良いでしょうね」 なるほど、たしかに男手があるならば、これはできるだろう だが 「…え?」 と言うと、ユーリフは目を丸くする 「え?私、なんか余計なこと言った?」 「ん、いや、なんか…」 淳が口ごもっていると、ロノが戻ってきた 彼女が振る度に水筒はみずみずしい音を立てている 「持ってきましたよ、お水!ジュンさん、どうぞ」 半ば押し付けられるように水筒を渡される 早く飲んで疲れを紛らわさせろということだろうか 元いた世界の物とそう変わらない水筒は、フタを開けて、口を付ける …のはさすがにやめて、少し口から離して、落とすように水を飲む 冷たい水が喉を潤す 「はあ…美味しい」 隣でユーリフがくすりと笑う 「大袈裟ね、所詮は給水所の水でしょ?」 「いや、それでも美味しいよ」 その様子を見て、ロノも微笑む しばらくすると、水筒の中は半分程飲み干されていた 思わず多めに飲んでしまったが、咎められはしなかった
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