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10分後
「いや~、お待たせしちゃって…あれ?ジュンさんは?」
「あそこ」
ユーリフが指差した先を視線で辿ると
壁に寄り掛かり、真っ白になっている淳が
「…何やってるんですか?」
「頑張ってたみたいだけど、結局荷物を落として…もう一回持ち上げようとしたら鈍い音がした」
「…疲労ですかね」
とりあえずそう仮定した
「治してあげれば?手間賃代わりに」
ユーリフが促すと、ロノは、そうですね、と淳に近寄る
「ジュンさーん」
ややあって、淳は申し訳なさそうに呟いた
「ロノ…ごめん…もうダメ…」
力無く言い切った淳は、そのまま座り込む
かなり無理をしたようだ
「あ~…ごめんなさい…今、楽にしてあげますね」
「…ロノ?なんだかニュアンスが」
淳のツッコミは無視して、ロノは屈んで、手の平を淳に向ける
すると、柔らかな風が淳の体を取り巻く
どんどん疲れが取れていく
腕の痺れも気にならなくなる
ふと、以前もこんな風を感じたことがあるのを思い出す
「治癒魔術です、本来は怪我とか病気とかを治すんですけど、疲れを取るのにも有効なんです」
「…治癒魔術」
風が止み、ロノが立ち上がる
淳も、もう立ち上がれる
「ありがとう、ロノ」
「いえ、荷物持ちさせちゃったお礼です」
にこりと微笑むロノにつられて、淳の顔も綻ぶ
「それより、ジュンさんにはずいぶん無理をさせちゃったみたいですね、もう帰りましょうか」
どうやら、気を使ってくれたようだ
なんだか、申し訳ない
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