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突然、ドムゥ、と腹部に鈍い衝撃が走る
「がっ…!?」
口から吐き出したよだれを残し、アイゼンは後方に吹っ飛ぶ
そこにいたのは
「なっ…ロノちゃん…」
だった
胸を押さえ、少し息を切らしながら竿を構える彼女は、ゼリューとの戦いで切られた鋭利な方ではなく、平らな方をアイゼンに向けていた
「…慣れない武器を…よくそこまで扱えるね…」
「それだけ、切羽詰まった、状況なん、です…」
ぜぇ、はぁ、と荒い息の間に言葉を紡ぐロノは、誰が見ても立ってるのがやっとだった
だが、アイゼンも突かれた鳩尾を押さえ、飛びそうな意識を繋いでいる
「くっ…リーダー!頑張ってくだしゃ」
ドパァ、とルルリットに強烈な水流が命中する
ユーリフの魔術だ
「あなたの拘束魔術…身体の動きは封じても、口は封じることが出来ないのね」
ユーリフはゆったりと、吹っ飛ぶルルリットを指差し、さながら勝利のポーズを取る
彼女の隣には、アイゼン達のターゲットである淳がいた
―――…なるほど、あの兄さんがあの魔術士を抱いて避けたってのかい…
空振りしたドロップキックの理由を知り、にやりと笑う
―――やるじゃないか、男のくせに
ルルリットは地面に落下し、ぐえっ、と悲鳴を上げてから気絶する
あとは
「私達リーダー同士の戦いってわけだね…」
アイゼンは腿に手をつき、ぐぐ、と苦しそうに立ち上がる
「どうやら、そのようですね…」
ロノも再度物干し竿を構え直す
一気に空気が張り詰める
どちらが先に動くか
もしかしたら、一瞬で勝負がつくかもしれない
その一瞬がいつなのか
長い
長すぎる
お互いの隙を窺っているのか
…
「…長くない?」
「…そうね…」
あまりに長すぎる
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