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淳とユーリフが去ってから5分後
「…ホントに行っちゃったみたいですね」
「…そうだね」
すっかり戦う気など無くしていた二人は、座り込んで嘆いていた
「…あの魔術士はともかく、あの兄さんはこんなことしないと思ったけど…」
「…怖いですから…ユーリフちゃん」
「…あぁ、そう…」
何とも言えない空気が二人の間に漂う
「…こんな状態じゃあ訪問者の兄さんを追うことも出来ないし…今回もはっきり言って負けだよ」
「はっきり言わなくてもわかってます」
「…そう…」
ドサリ、と土の上に寝そべる
馬車の馬は、いつ走ればよいのか、とじだんだを踏んでいる
そうか、この馬達も返さなくてはならない
めんどくさいねぇ、と頭を掻く
その時、遠くから鉄同士が擦れる音が聞こえてきた
王都の方から聞こえる
いや、なぜかその横の川から聞こえてくる
あの川は遠くの山から流れてくる水が、王都の中を通り、海へ行く川だったはずだ
バシャ、バシャ、と水が跳ねる音も聞こえる
「…何ですか?この音…」
「さあ…」
ロノの答えを期待しない問いに生返事をする
だんだんと、はっきり聞こえてくる
ずしゃ、と土を踏む音に変わった
いよいよわけがわからなくなった
しかし、それは意外と早めに明らかになる
「…ぃ…ダ…」
「…も、もしかして」
「リー…ダー」
「ゼ、ゼリュー!助けに来てくれたのか!?」
アイゼンは嬉々として、寝返りを打つように移動する
そこまでして会いに行ったゼリューは
ほふく前進のように近付いてきていた
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