薔薇の十字架

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ヴァルヘイル城 「申し訳ありません!皇帝陛下!このアイゼン・フロイライン、不覚にも勅命の遂行に失敗いたしました!」 「そうか」 心の中で首を傾げた 正直、首がはねられるのを覚悟していたのだが、あまりに気が無さすぎる よもや、呆れ返って、手を下す気にならないのかもしれない そうなると、最悪ルルリットもアイゼンと共に国外追放、ゼリューはスクラップにされてしまうかもしれない まあゼリューは現状がスクラップのような状態だが 「もとより、失敗は視野に入れていた、労いはすれど、罰を与えようなどとは思っていない」 一瞬呆けたが、すぐに、有難うございます、とかしこまる 「それより、おまえ達の行動、全てを見ていたが、なかなかに面白かった、任務に対する物ではないが、別の褒美はやろう」 「じ、自分のような一介の民に皇帝陛下御自ら褒美など…勿体…」 「私が、やろう、と言っている、酔狂ではあれど、冗談ではない」 全身に浴びた視線 死を覚悟した だが、女帝は自ら箱を片手に持ち、アイゼンの目前まで歩み寄った こんな時は、絶対的に下の地位である自分が寄るものだ しくってしまった 「申し訳ありません!」 「気にするな、玉座から動かぬ『帝』など、置物と変わらん」 アイゼンは差し出された箱を受け取り、深々と頭を下げ、女帝の、下がれ、の声を聞いてから立ち上がり、頭を下げ、立ち去る 何日か前に呼ばれた時の様に、身体の震えが止まらなかった
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