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「…その時は、その時よ…」
ユーリフはぽつりと答え、2階へ消えていく
「どこ行くんですか?」
「ジュン一人に任せておけないわ、部屋に入るのを許したのに、不備があったら困るから」
そして、彼女は2階の自室へ入ったようだ
「…ユーリフちゃん…?」
ロノは不思議そうに首を傾げた
○
翌日
早朝
リヒト・レーゲンの三人は街道を歩いていた
目的地の洞窟まで、それほど距離はない
「ロノ、本当に僕もついていっていいの?」
淳が心配そうな面持ちでリーダーに尋ねる
行きたくない、だとか面倒事は押し付けよう、といった物ではなく、自分が足手まといになるだろうことをわかっている、そんな表情だ
しかし、ロノは明るい顔をする
「大丈夫ですよ、危なくなったら、逃げちゃっても構いませんから」
そうは言ったが、彼が言った通りにするとは思っていない
彼なら、迷惑とわかっていながら、自分も怪物の前に踊り出るだろう
ロノやユーリフが危機に陥った時、彼は迷い無く助ける
その身を犠牲にしようとも
―――その気持ちは嬉しいんですけど、やっぱりジュンさんには怪我をしてほしくはありませんからね…
怪物と出会ったら、直ぐさま退散しよう
それなら、危険な目に遭わなくて済む
しばらく歩いていると、ユーリフが街道の外側を見たまま、ふと足を止めた
「どうしたんですか?」
「…あれ、例の洞窟じゃないかしら」
ユーリフの視線の先を辿ると、たしかに小さな洞穴のような物が見える
小さすぎて、動物の巣かと思うほどだが
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