暗き洞にて

13/30
前へ
/1039ページ
次へ
前を歩く二人の動きに注意して、淳は頭を振り振り、ついていく そして、ようやく広い場所に出た 「あ、よかった、腰が痛くてたまらなかったよ」 屈伸運動をして、腰を叩く淳に、ユーリフは横目で冷ややかな視線を送る 「そう、でももっと痛い思いをしたくなければ、黙ってて」 「え」 「ここはいやに空気が澱んでいるわ、もしかしたら、モンスターがいるかもね」 そう言われた瞬間、周囲に殺気が立った ような気がした 自分から見て、ユーリフの向こう側に怪しい光が見えた ような気がした 少しだけ、過敏になってしまった 「ジュンさん、無理しなくても良いですよ、なんでしたら、外で待ってても…」 「い、いや、僕だって、リヒト・レーゲンの一員だし、泣き言は言ってられないよ」 少しだけ強がってみせると、くすりと笑われた ユーリフは…こっちを向いてはいないのでわからない 「止まって」 ユーリフが右手で二人を止める 指で壁に寄るように指示される 壁に張り付いてから、淳はユーリフの上から、彼女の視線を辿る 「あっ…あれは…」 緊張で喉が鳴る 巨大で、膨れ上がったような岩が、『立って』いた 間違いない、二本の足で直立している それに、短いながらも、腕のような物まである 「な、何…あれ」 言葉を発した淳の口に、ユーリフの指が当てられる 「黙って」 眉間にしわを寄せるユーリフに、ごめん、と小声で謝る 「見たことのないモンスターですね」 後ろから様子を窺っていたロノが呟く 「…私も記憶に無いわ、無視するに限るわね」 ですね、とロノが頷く
/1039ページ

最初のコメントを投稿しよう!

881人が本棚に入れています
本棚に追加