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「いいんですか?ジュンさんを一人にしてしまって…」
分けられた荷物を背負うロノが、心配そうに、淳が走り去った方を見つめる
一方のユーリフは、あくまで冷静だった
「問題は無いわ、ジュンだって馬鹿じゃないから、危険だって判断したら、すぐに逃げるだろうし、いざとなったら術式があるから…」
「そうじゃなくて…」
ぴた、と時が止まったように、ユーリフは固まる
「…そうじゃなくて?」
振り向かずに尋ねてきた
何故だろう、彼女はこちらを見てはいないのに、ずいぶんと威圧感がある
おかげで、口は開きかけたまま、紡ぐべき言葉を見失う
黙り込んでいると、ユーリフは痺れを切らしたように振り向く
そして、何事か言及しようとしたのだろう、一つ、言葉を発した直後
彼女の背後の岩がえぐれ、洞窟内に地震のような振動が響き渡る
「な…」
ユーリフは、さっきまで自分が向いていた方を振り返り、目を大きく見開く
ロノは後退りをした
岩の怪物が、そこにいた
○
重い音の後、地面が揺れる
洞窟の入口で、棒のように突っ立っていた淳は、思わず身震いする
「…な、なんだ…?」
そう問い掛けても、答えてくれる者はいない
なんだか急に虚しくなった気がする
だが、今の地震は気になる
どうするべきか
いや、どうしたいかは既にわかっている
しかし、それをしたところで、どうなるわけでもない
自分では、何も出来ない
ユーリフの言う通り、自分は足手まといに外ならない
ならそんな足手まといは、ここで、動かずにいるしかない
静かに、時が過ぎるのを待つしか
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