暗き洞にて

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「くっ…なん…なのよ…!」 岩の怪物に襲われ、隠れながらあちこちを動き回る内に、ロノとはぐれてしまった だが、なんとか怪物はまいたようだ 荒い息を落ち着けるため、その場に座り込む 小分けされた荷物から、水筒を取り出して口に注ぐ 喉を鳴らし、適量を飲むと、水筒を締める 口の端から漏れる水を拭い、辺りを見回す ―――ロノと…合流しなきゃ… 少なくとも、離れ離れになっていては、どちらも危険だ 膝を手で押さえ、立ち上がる 「…ロノ…」 荷物を担ぎ、なるべく音を立てないように移動する そういえば、不思議な点がある 何故、あの怪物は自分達を『見た』のか 今までに、そんな無機物の怪物は見たことも聞いたこともない 無機物の怪物は普通、意味も無く徘徊し、気配のみで殺す相手を追う 視覚を有しているなど、信じられない それでも、あの岩の隙間からは確かに視線を感じた あれは『見ていた』に違いない 普段から、他人の視線に注意を配っているからこそ、確信して言える ふと、あることに気付く ―――…なんで私は今…他『人』の視線だと思ったの…? やけに生命の熱を持った視線だと感じたからだろうか だとすると、おかしい あの怪物はどう見ても生物ではない なら、どうして 顎に手をあて、考え込む バン 目の前の岩が崩れる 「…え…」 ズン、ズン、と地響きが起こる 「…そんな…」 目の前に、再び怪物が現れる 舌打ちをし、踵を返して走る 今度は、間隔の狭い地響きが追ってくる
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