暗き洞にて

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そこからは覚えていない ただ見える道を行くだけだった ふと、光が見えた 出口だ 今いる周囲の地形にも見覚えがある だが、足はその場で止まった 行けない 出口には、淳がいるはずだ ―――…ジュンは…巻き込みたくない… そこで、はっと気付き、ぶんぶんと頭を振る ―――違う、あいつは足手まといなだけ… また引き返し、もう一つ、分かれた道を行く 走りながら、来た道を少しだけ振り返る 遠い 追ってきてはいるが、だいぶ距離は空けた これなら、あともう少しでまける 前に向き直った時だった 背に、衝撃が走る 腹を引かれるように宙を飛び、壁にたたき付けられる 「…!?」 激痛も、身体中を駆け回る そのまま、地面に落ちる 「ぐぅ…ぁ…」 急に、体の力が抜ける 起き上がろうにも、力が入らない 地響きが近付き、痛む全身を軋ませる 力の入らない腕に、動けと命令するも、まるで動く気配が無い 「く…っ!こんな…所…で…死ぬ…わけには!」 強い意志を持って、腕を動かす だが、体を支えることすら出来ない ―――死なない!死んでたまるか!あれを…果たすまでは…! 「ユーリフちゃん!」 ぴく、とユーリフの耳が動く 直後、ダン、と、何かがユーリフの頭の横で踏み切る 「はっ!」 バキィ、という、木か何かが砕ける音 さらに、硬質な物が転がる音が相次ぐ 「大丈夫ですか!?」 わずかに動く腕を突き、体を半分だけ起こす 「…ロノ…」 「よかった!意識はありますね!今、この怪物をやっつけちゃいます!」
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