疑い

6/13
前へ
/114ページ
次へ
私の言葉に、今度は尚子の口が動かなくなった。 「達哉ね…。最近さ、…私を遠ざけてる…みたいなんだよね。」 「…。でっ、でも―」 「旅行に行くのが分かったのも今日で、しかも私が言わせた感じでだし…。ホントに旅行なんだかどうだか…。」 「ちょ、何もそこまで疑わなくてもいいと思うよ。私がタツの旅行知ったのも、私が行くって話をした流れでだから。」 「でも、会ったんでしょ?私には会えないっていつも言うのに…、あいつ。」 尚子を責めるつもりはもうとうないのに、つい口が動いてしまった。 「いやいや。約束して会ったわけじゃないからね、マジで。仕事の出先にたまたまタツがいたんだって。マジだって!」 尚子の必死の言葉に苦笑しちゃった。そこまで必死にならなくてもいいのに。私は尚子を信じてる。 でも…。 「うん。」 信じてるけど、一言言うのが精一杯だった。 どこかで、尚子を疑ってるのかもしれない。疑ってるというよりも、達哉に会った尚子が羨ましく感じたのかもしれない。 それだけ私は達哉を欲している。 「あいつも顔広いからねぇ。普通に男だらけの汗臭い旅行だよ。絶対。またサバイバルだか何だか無謀な計画立ててるんじゃない?バカにされたくないから、言わないだけよ。 だって志保、真面目だもん。職探しもしないで――、とか言いそうだし。」
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加