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私の言葉に、今度は尚子の口が動かなくなった。
「達哉ね…。最近さ、…私を遠ざけてる…みたいなんだよね。」
「…。でっ、でも―」
「旅行に行くのが分かったのも今日で、しかも私が言わせた感じでだし…。ホントに旅行なんだかどうだか…。」
「ちょ、何もそこまで疑わなくてもいいと思うよ。私がタツの旅行知ったのも、私が行くって話をした流れでだから。」
「でも、会ったんでしょ?私には会えないっていつも言うのに…、あいつ。」
尚子を責めるつもりはもうとうないのに、つい口が動いてしまった。
「いやいや。約束して会ったわけじゃないからね、マジで。仕事の出先にたまたまタツがいたんだって。マジだって!」
尚子の必死の言葉に苦笑しちゃった。そこまで必死にならなくてもいいのに。私は尚子を信じてる。
でも…。
「うん。」
信じてるけど、一言言うのが精一杯だった。
どこかで、尚子を疑ってるのかもしれない。疑ってるというよりも、達哉に会った尚子が羨ましく感じたのかもしれない。
それだけ私は達哉を欲している。
「あいつも顔広いからねぇ。普通に男だらけの汗臭い旅行だよ。絶対。またサバイバルだか何だか無謀な計画立ててるんじゃない?バカにされたくないから、言わないだけよ。
だって志保、真面目だもん。職探しもしないで――、とか言いそうだし。」
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