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家具の配置や物がないとかじゃなく、空気が違う。
いつも、一人で暮らしていても、一人寂しく帰ってきても、この部屋には志保がいた。どこか温かい空気が俺を包んでた。
でも、今のこの部屋は冷たい…。志保の温もりがどこにも見当たらない。きっと、確認するまでもなく、荷物はなくなってて、鍵はポストにでも入っているんだろう。
「鍵は会いに来る為に使うもんだっつーの…。あのバカ…。鍵の使い方も知らねーのかよ…。」
俺はその場から動けず、何も考えられないまま、ただひたすら部屋を眺めていた。
「志保…。し…っ…ほ…。…っく…。」
気づけば冷たいものが頬をつたい、嗚咽が止まらなかった。
遅かった…。後少しだったのに…。
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