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私はまた、こんないけない事考えてる。
さっき青い鳥には青い鳥の人生があるって私、割り切ったじゃない。
―願い事を一つだけ聞いてやる―
青い鳥にはこの国を救って貰った恩がある。
一つだけ……
もう私は充分幸せにして貰ったじゃない。
一人はもう嫌なの…!
これ以上望むのは我が儘よ……!
理性と本能の間でアンジェラは揺れる。
私の頭の上で、天使と悪魔が言い争う。
「アンジェラ……願いはないのか?」
「私の…願いは………」
青い鳥の言葉にアンジェラの心は騒ぎ立てる。
青い鳥に名前を呼ばれて気がついた。
私の本当の願い―……
一国の姫ではなく、私の……アンジェラとしての願い。
今だけは……姫であることを忘れてもいいのかな?
一人の女として……この一瞬だけでも、好きな人と……
一国の姫として突然背負わされた責任、身を縛り付ける鎖。
風が吹く。
青い鳥に連れて来られたこの空は、アンジェラの心を蝕んでいたものを溶かしていく。
「青い鳥……私の願いは……探してた幸せは……」
アンジェラはそっと青い鳥に近づき、爪先立ちしてその唇を……
……―重ねた。
―完―
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