一.幼い頃の経験

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嘘でもいいから言っておかないと悪いから。 「本当か。」 お父さんは窺うように問いかけてきた。両肘をテーブルの上に載せニコニコしている。 そんなお父さんを見ていると時々、子供のように見えてしまう。 「そうだ草太、明日お父さん会社の帰り遅いから冷蔵庫に入っている物を適当に食べてくれるかな。」 「わかった。…ごちそうさまでした」 残さずご飯を食べ終わり部屋に戻ることにした。 「遅くならないうちに風呂入りなよ」 水を出している音とともに、一階の台所からお父さんの声が聞こえる。適当に返事をして浴室へ行った。 お風呂を出ると僕は学校から出されていた宿題をやるため、窓際に置かれた机に向い教科書と問題集を広げ書き始める。 時刻は二十二時になろうとしている頃であった。やはり、勉強をしている時も少し駅前でギターを弾いていた子のことが気にかかる。宿題を終わらせ、今日は早く寝ることにした。  ベッドに入ってから寝付くまで時間がかかった。明日会える事を考えると、うきうきして眠れない。  早く明日にならないかと思いながら、まぶたを閉じた。
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