暑い夏

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暑い日の昼 僕はいつものように歩いて二分くらいの場所にある近所のスーパーで豆腐を買ってきた 毎年夏になると無性に豆腐が食べたくなるのだ これといって豆腐が好きなわけではない 味にはとっくに飽きているし、もはやおいしいとも思わない 時々『三食〇〇だけでイケる』なんて話しを聞くが、毎日同じ物を食べることは次第に苦痛になっていく 同時に『習慣』になっていく そうだ『習慣』だ オレは豆腐が好きなわけではない 習慣で仕方なく食べているに過ぎないのだ いつものようにフタを開け 汁を捨てる 夏になると最低でも一度は必ず軽度の食あたり…酷いときは猛烈な腹痛に襲われる為、なるべく食べるものには触れないようにしたい そんな心理が働き手が触れないように慎重に傾かせ、水を捨てる 特別神経質というわけではないのだが、なるべく限界まで水を捨てる 豆腐の種類によってはかなり水が入っているものもあるので、ものによっては時々傾かせ過ぎて落下させてしまうときもある… そんなときは再び買いに行くことはせず、食べることは諦めて素直に『罰』を受けている そんなわけで今回は無事に水を捨て、機械的に椅子に座り、ぼんやりとテレビを見ながら箸で崩さないように慎重に掴み、食べる 豆腐は、形状と材質的にはプリンやヨーグルトに近いので、スプーンで食べた方が理にかなっているように思う そう思いながらも箸で食べてしまうのは、スーパーに行くとつい割り箸を持って帰ってきてしまうからだ そんなわけで部屋にはラーメン屋並に未使用の割り箸がある だからスーパーで割り箸を入れ忘れても自動的にそこから割り箸を使うことになる 『在庫状況』から考えて、スプーンで豆腐を食べる日はこないような気がする 人間とは不思議なもので、やろうと思えばいつでもできてしまうことは無理にやらず先延ばしにする傾向がある ましてや箸は目の前に腐るほどあるのだ わざわざスプーンを取りに行くなんてことは絶対ないだろう テレビを見ながら食べ続けていると ふと、景色に何か違和感を感じた
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