出会い

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改めて助けた青年を見れば、少し年齢は上だろうけれど、そう自分と変わらなさそうな歳である事に気付いた。 メルと同じくらいかな…… なんてぼんやり頭のすみで考える。 髪は茶色で、短くもないが、長くもない程。 目の色…は閉じているからわからない。 人間の感性はわからないけれど、整っているほうに感じる。たぶん。 ……船乗りだよね、船に乗っていたなら。 船があんな風になって……目が覚めたら一人で、周りには誰もいない……なんて、どんな気分なんだろう…… きっと、一生自分にはわからないだろう気持ちを、想像してみる。 それはきっとすごく不安で……怖いことである事はわかった。 それを与えたのは、きっと私たち。 そう思うと、胸が酷く痛んだ。 「……うっ」 その声に、一気に思考が引き戻される。 青年は小さく呻いたあと、うっすらと目を開けた。 そしてゆっくりそのまま開いていく。 その目は透き通るような青をたたえていた。 まるで海のような深い青。 体を起こす時も、何度か呻きながら起き上がった。 そのままぼんやり、辺りを確認するように首を巡らせたので、慌てて岩場の影に隠れる。 「船は…………そうか、人魚の歌がきこえて……そのまま……」 思わずどきりとした。 やっぱり私たちの歌が…… 胸が痛い。 ずきずきと痛む。 すると、ふっと息をもらて 「……運がいいのか、悪いのか……船は難破したけど……こうして助かるなんてな」 そう、呟く声が聞こえた。 それだけで、胸の痛みが熱さに変わった気がした。 良かった…… 助けた事は無駄なんかじゃなかった。 少しでも、生きている事を喜んでくれたから。 それがすごく、私の気持ちを救ってくれた。
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