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武爺
「おい健ぼう!そんな調子じゃ日が暮れるだろが!!!!」
健太
「わーってるって!あれで七十越えてるってんだから化けもんだわな。いくぞ、透夜」
透夜
「え~!?あと何往復すれば終わるんだよぉ~」
健太
「んなもん俺が知るかよ。俺達が干からびるまでじゃねえか?」
武爺
「さっさと行かんか!」
透夜
「わわっ」
健太
「いそげ!」
透夜(N)
『愚痴を零したところで武爺の怒声が再び火を噴いた。健太と僕は慌てて飛び上がると一目散に駆け出す。後から追ってくる荷車の車輪の音だけが、ガラガラとどこまでもついてきていた』
透夜(N)
『蒸し暑いこの季節になると、過疎の進んだこの村にも僅かながら活気が戻ってくる。年に一度の祭準備でどこの家も賑わい出すからだ。……僕達子供からすれば、年内で最もこき使われる苦痛な時期でもあるのだが』
【水和卦村入口】
透夜(N)
『二人で空の荷車を引きずってやってきた場所には、漢字だらけの木札が打ち込んである。村唯一のバス停でもあるこの場所には、古びたベンチと停留所のポール以外には何もない。今日だけで、この場所に何度来たことか……もう数えることさえ諦めた』
透夜
「健ちゃん、暑いね」
透夜(N)
『耐えきれず何度目かの声が漏れた。額に浮かぶ汗が耳横を通る度に嫌な感覚が全身を襲う。くすぐったくてすぐに拭うが、その無意識の動作さえ暑さを誘った』
健太
「だぁあ!!それは言うなや。余計暑くなる!」
透夜(N)
『喋ると余計暑いことを学習した僕らは、黙って作業を進めることにした。文句を言っても仕方ないことは毎年の繰り返しで思い知っている』
透夜
「今年もお祭りが始まるね」
透夜(N)
『独り言のように呟いた声は、青すぎる空に吸い取られていった』
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