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○×県○○市の田舎町、から更に奥、日に2回しかないバスで30分行った所に広大な私有地があった。
そこには大きな古い建物があり、洋館を思わせるような外装の建築物が三つ立ち並んでいる。左右にあるのは幾分小さく、真ん中にある建物は国会議事堂ぐらいの大きさを誇っている。
裏庭には綺麗に整備されたグラウンド、テニスコート、プール。中庭にはカフェテラス、前庭右には植物を育てている温室があり、中央から左側には花壇、と一言では表せない程作りこんだ庭園になっている。
ここまで事前に渡されたパンフレットを読んだ俺は深い溜息をついた。
こんな学校、日本にあったのか。
バスに揺られ、早10分。既に民家はなく、木々の割合が多くなってきた頃。見るものもないので、とりあえず今までろくに見もしなかった学校のパンフレットを見たのがいけなかった。
まだ辿りついてもいないのに、足を踏み入れる気力を一気にそがれてしまった。
俺がこれから行こうとしている所は、今年の四月から入学する予定の学校、私立清風学園というところで、昭和初期に創設された由緒ある学校として知られている。
創設時の校風を現在も色濃く残しており、その一つが男子校という点だ。当時、華族の子息が多くこの学校に通っていた為、男女一緒に勉学に励むという考えがなく、男尊の時代であった事もあり、女性が高校に行く事もなかった。
今も心の乱れに繋がるという理由からそれは守られ、この山奥に先生も生徒も皆男という環境が出来上がったのだった。
清風学園に入学する生徒は大部分がお金持ちの息子で、俺みたいな中流家庭の一般人が入学することはない。別に制限しているわけではないのだが、お金がやたらかかるので金持ち以外入れないのだ。
そう、それなのに何故俺が入学する予定なのか。俺もつい半年までは全く予想だにしていなかった。
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