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「そう、一緒に写ってるのが孝幸さん。昨日、プロポーズ受けたの」
閉じた目をカッと見開くと、俺はプリクラを物凄い勢いで指さした。
「どう見たってこの男20代だろ!」
母さんは一瞬キョトンとし、遅れて「そうね」と言った。それが何なのか?といった具合である。
そんな母さんの様子に一気に脱力する。
普通、もう少し気にするだろ、何たって、母さんはアラフォーなんだから。
ひょっとしたらこの「孝幸さん」なる男、俺との方が年が近いかもしれない。
「この人、…何歳なの」
「この前、大学出たって言ってたから…、25歳だわ」
やっぱり。
母さんも若作りな方だとは思うが、どちらかというと俺のお兄さんといった方がピッタリの年齢ではないか。
「相手の親、反対しなかったわけ?」
「そうね、反対は特になかったわよ」
さらっと言ってのける母親にもう、どうでもよくなってきた。当人同士がいいのであればそれでいいのかもしれない。
「それでね、明日から彼の家に住むから」
「は?」
「あっ、荷物は引っ越し業者さんにお願いしてあるから、まとめなくても大丈夫よ」
「そんな金どっから出てくるんだよって、違う、まず問題なのは急すぎるだろっ!、俺だって人に見られたくないものだってあるんだから」
「まぁ!、お母さんに内緒でエロ本なんて隠しもってたのね、そういうものはどうどうと置くものよ」
「持ってねぇし、いやそういうのじゃなくて、もっとこう甘酸っぱい青春的なやつがね、俺にもあんの」
「何言ってるか意味がわからないわ」
「俺も意味がわかんねぇよ」
やばい、どんどん話がズレていく。いつものパターンに俺はブレーキをかけた。
「だからさ、まず順番っていうもんがあるでしょ。結婚しちゃったものはしょうがないから、そこは変えられないけれど、先に俺にその孝幸さんってのを紹介してから、一緒に暮らすんじゃないわけ?」
俺は筋の通った正論を母さんに話す。
母さんは面白くなさそうな顔で見つめ、それから溜息を吐いた。
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