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「どいつもこいつもお人よしすぎるんだよ。
男ってチョロすぎー!」
その言葉にもう片方の女がゲラゲラと笑いだす。
そのときヒコロウは女子二人を睨みながら席を立とうとした。
だがジュンジの腕がヒコロウの胸元に出た。
「アカンで、ヒコ。」
ヒコロウは歯を食いしばって浮いたふとももを席に下ろした。
ヒコロウと長い付き合いのジュンジであるが、これほどのヒコロウの怒りの表情を見ることは初めてであった。
しばらくして女子二人は電車を降りた。
ヒコロウはその後自分の足元に視線を向けたまま電車に揺らされるがままだった。
いつも降りる駅の名前がアナウンスで流れるとヒコロウは重い腰を上げた。
電車内からホームへ足を移すとジュンジはヒコロウになだめるように声をかけた。
「気にすんなってヒコ。
確かにお前はお人よしやけど、ああいう女はなぁ痛い目におうたら・・」
「決めた・・・。」
「え?」
ヒコロウはとぼとぼ歩きながら小さな声でこぼした。
そしてうつむいた顔を思いきり上げると真っすぐと前を向いた。
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