five-turn

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顔の紅も引き、 平常心に戻ってきた。 二人の間に会話はなく、 駅周辺を散歩する。 「二ノ宮」 「はい?」 「私はデートが初めてなんだ。 だから、どうしたらいいか わからないんだ。 計画も立ててないし、 姉の言葉は当てにならない。 その、何がしたい?」 恥じらいと 申し訳なさそうな目をして、  俺に聞いてくる。 困った。 別に有空さんが 終始引っ張ってくれるとは 思っていない。 しかし、自分には リード出来るほどの知識と 経験がないのも事実。 ようは俺も初めて。 「そうですね、 特に何も………あ」 「ん?」 頭の中に 三ヶ月前の記憶が浮かび上がる。 鞄の中をあさると、 茶色い封筒が合った。 隣で有空さんが その封筒を眺める。 「なんだ、それは?」 「海沿い近くにできた 遊園地はわかりますよね」 「あぁ、結構人気があるな」 「これ、新春の商店街であった くじ引きで当たったんです」 封筒の中から二枚のカラフルな 紙を取り出す。 「それって」 「えぇ、 マビワールドのチケットです」 すっかり忘れていた。 誕生日に 和葉と行こうとか考えて、 鞄に眠らしたままだった。 「いいのか?」 「嫌ですか?」 「嫌じゃないが………」 「遠慮はいりません。 無理矢理、連れていきますから」 自然と有空さんの手を握れた。 何の意識も なくやったものだから、 自覚症状が出たのは 遊園地に着いてからだった。
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