five-turn

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「遊園地なんて 十年ぶりだからな。 こんなに楽しかったなんて 忘れていたよ」 「……よ、よかった、でですね」 死ぬ。 桐原有空を甘く見ていた。 というか自分は傲慢だった。 まさか、 「二ノ宮、絶叫系は弱いんだな」 「……うん」 何か見えないのを 無くした気がする。 「そろそろ昼だけど、 ご飯食べれそうか?」 「オー、ケー」 「…………………」 沈黙が痛い。 今すぐ泣きたい。 「今日は楽しかったな」 「ほ、ホントですね」 「笑うな!」 有空さんに怒鳴られる。 ご飯を食べた後は、 敷地内のお土産をみまわった。 そこでお化け屋敷を発見。 結構本格的な建物で、 面白そうだと思い 有空さんの方を向く。 そこには目に涙を浮かべ、 体を震わす兎が一匹。 「怖いんですか?」 「怖くない」 「いや、なみ」 「怖くない」 「でも、体が」 「行くぞ」 強引に建物へ入る。 数多の叫びを耳に叩き込み、 出てきて5分は 腕から離れることはなかった。 「いや、可愛いですよ」 「嬉しくない」 定番となった観覧車の中で そっぽを向いてしまった。 「すいません」 「許さない」 俺は苦笑いをするしかできない。 夕日が体に当たる。 ほんのりとした温かさを感じた。 機嫌を損ねてしまった以上、 ここまま終わるのは後味が悪い。 「何でも言うこと聞きますから」 言ってから後悔する。 気分は悪魔との契約。 時間逆行に至りたい。 それほど有空さんの笑顔は 魔的だった。
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