five-turn

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「私たち付き合ってないよな」 「そうだね」 二人とも告白をした記録はない。 「でも、 デートしたり寝たりしてるよな」 「そうだね」 やってること恋人同志。 「不思議だな、私たちの関係」 「嫌?」 「逆だよ。 凄く落ち着くから、好きだ」 嬉しいことだ。 でも、 それだけじゃ満足しきれない。 「有空………」 「なんだ?」 一言。 一歩の勇気が欲しい。 「また来よう」 「じゃあ、来週も行くか」 「それはちょっと」 結局、 俺は二ノ宮秋人で、 弱いだけの存在だった。 「楽しかった、でぇとぉ?」 「怒るなよ」 「別にー、激怒してないから」 帰ってきてからこの調子だ。 理由は簡単。 マビワールドのことを 喋ってしまった。 「今度埋め合わせするから」 「ふん」 和葉は許してくれたのだと 思っておこう。  「そう言えば、 今日仕送り来てたから」 「わかった」 機嫌も直り洗い物を始めだした。 俺は言われた通り 仕送りの封筒を手に取る。 「ん?」 中には日本紙幣が五十枚程度。 そして紙が一枚。 「         」 声が出ない。 知能は必死に何かを求める。 「兄さん、どうかした?」 台所から和葉が声をかける。 平常を装って 大丈夫だと返事をする。 水の音がやけに耳に残った。
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