five-turn

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感覚のない足を 上半身で強引に引きずる。 数日前、焦りと不安で走った道。 一歩一歩踏み出すたび、 頭の回路が焼き切れる。 公園まで100メートル。 この距離にいくらの時間を 費やしているのだろう。 吐き気はない、気分も悪くない。 それでも頭痛は消えない。 いつの間にか辿り着いた入口には 有日さんが立っている。 「やぁ、3日ぶりか」 「まぁ、そのくらいです」 「すまないな、 急に呼び出してしまって」 夜、携帯に連絡が合った。 「現場での話を聞きたい。 明日例の公園まで来てくれ」 時間を決め、それに合わせるよう 家を出た。 結果は遅れてしまったが。 「それじゃ、始めようか」 「はい」 アカイ記憶を引き出す。 口はゆっくり動きだした。 「最初の時と変わらないか」 一通りの再現が終わり、 収穫なしといった感じで 呟く有日さん。 「まだ、話してくれないか?」 「すいません。 これは多分、俺が 解決しなきゃいけないんです」 「考えがあるのか?」 「鋭いですね」 「秋人くん、 自信と無謀は違うよ」 「でも、俺は男ですから」 会話が途切れる。 プライドの張り合い。 お互い譲ることがない。 「手伝えることが 合ったら言ってくれ」 姉妹そろって優しい人たちだ。 それに 俺も頼みたいことがあった。 「じゃあ、早速いいですか?」 「なんだ?」 一枚の紙を手渡す。 それはひどく重かった。
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