five-turn

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有日さんは 疑問の表情を浮かべる。 「それについて 詳しく調べてほしいんです」 「構わないが、これは」 当然のように戸惑う。 「俺では力不足なんです。 お願いします」 これは事実。 俺一人では状況が悪い。 「………わかった」 「ありがとうございます」 有日さんの協力は得られた。 しかし、 今だ犯人はわからず仕舞い。 こればっかりは 地道にいくしかない。 電子音が鳴り響く。 俺の着信音ではないので 自然と有日さんのものになる。 俺は黙っていたのだか 有日さんの様子が乱れてる。 電話を切り、俺の方を向く。 「有空が刺された」 血の気が引く。 死体を見たときより 醜い気分だった。 「だから、 大丈夫だと言っているだろ?」 「何が大丈夫だ。 左腕バッサリ 持っていかれているじゃないか」 「死んでないからいいんだよ」 心配して損という訳じゃないが、 精神の消耗は大きすぎる。 有空さんは生きていた。 刺されたのは左腕で全治三週間。 「よかった」 心からそう思った。 こんなにも 動揺するとは思わなかった。 本当に怖いと思った。 「秋人、 心配しすぎじゃないか?」 有空は いつものように話し掛けてきた。 「秋人くんがどれだけ お前のことを思ってくれたか」 有日さんは怒る口調でいう。 「はははっ」 なんか笑えてきた。 安心感に溺れてしまう。 不思議そうに俺を見る二人は 同じタイミングで 顔を見合わせていた。
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