five-turn

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有空が刺され、 三日間の休校処置がとられた。 俺は学校の指示通り、 家で休校を満喫していた。 「二十五回目」 テーブルに宿題を広げ、 唸っていた和葉から 意味不明な回数を告げられる。 「詞遊び?」 「溜め息の回数。 自覚ないと思うけど、 昨日からの通算だと百いくよ」 「…………………」 ヤバい。 兎に角ヤバい。 冷静に振る舞っていたつもりが おんぼろロボットだったようだ。 「なんかあった?」 「まぁ」 「何?」 「言いたくない、てか言えない」 「えー」 声を出しているが 聞きたい欲求を抑えてくれた。 しかし、見えない俺が この場を拒絶している。 「どっか行くの?」 「散歩だよ」 「じゃあ、 その前にここ教えてよ。 A級特待生さん」 「双子でも違うものだな。 赤点保有者さん」 シャーペンを受け取り 問題を解いてやる。 頼むから進級だけはしてくれ。 ただ歩く。 自由で楽だが、目的がなく辛い。 いざ散歩をしてみたら 案外暇なものだ。 「秋人じゃんか」 「優、作か」 聞き慣れた声を耳にし、 顔を上げると案の定優作だった。 「なんでここにいんの?」 「散歩。で、そっちは?」 「部活の備品買い出し」 「暇だから 付いていっていいか?」 「まぁ、つまんないけどな」 許可はもらったが おふざけなしの 真面目なものらしい。 大型スーパーに向かう 優作の隣に並ぶ。 それでも、 目的が見つかって一安心だった。
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