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ややあってから、立ち上がって足を肩幅に開き、
「……ちょうど良さそうだし、その目で見てみる?」
純白に染まる三日月形の鎌を、音もわずかに構える。羽のような装飾が、刃の末端で煌めいた。
「あら、来るの?」
茶化すように言う女は、言葉の余裕さとは裏腹に、いつでも剣を振れる体勢を作り、
「うふふ……いらっしゃい。可愛がって、あ・げ・る」
どことなく危険な口調で、眼前の少女を挑発する。
「じゃあ……行くわよ」
一方の少女は、女性にではなく、
「<クレセント・ヴァンパイア>」
自身の相棒に向かって、そっと呟いた。
次の瞬間、雪のように白かった刃は、剣尖から末端の装飾まで、血のような真紅に染まる。
使用者本人の血液しか吸っていないため、その変化は実に緩やかだ。
「?」
わずかに目を見開く女を前に、長い柄の中程を握る桜田は、
「【血色(ちいろ)の波紋】……」
刃が下に来るように持ち、切っ先を相手に向け、
「【-氷山-】!」
声高に吠えて斬り上げた。
軌道に満月を描く刃は、地面を赤く塗り替える魔力体を、放射状に放つ。
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