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桜田の思惑通りに。
(かかった!)
彼女が放った鳥型の刃の内、無事なものは、女の周囲に広がる真紅の山にヒットする。
それにより、
「行けェェェ!」
接触した部分が、細かい刃の散弾となって炸裂し、四方八方から女性に襲いかかった。
相手の様子は見えないが、届いてくる破砕音から、手応えを実感する桜田は、
(完全に木宮君の真似だけど……まあいっか……)
息を切らしながら、紅の氷山を前に、わずかな微笑みすら見せる。
しかし、
「……」
心中に浮かんだ"木宮"という人名に、すぐに表情を曇らせた。
ここ最近の彼女は、木宮のことを考えるたびに、テンションが下降してしまう。
今のような非常時においても、それは変わらない。
「……あー、もう!」
茶色のショートカットを引っ掻き回し、嫌な方向へ転がりそうな思考を中断する。
続いて空を見上げるが、夜空には相変わらず、結界の存在を示す文字群が駆けていた。
(……どうすれば解けるのかな?)
小首を傾げた桜田は、ひとまず結界の壁際に移動するべく、色を失ってしまった鎌を持ったまま歩き出す。
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