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ぐらりと、彼女の視界が揺れる。
「くッ……!」
痛みと目眩に感覚を奪われながらも、桜田は関節剣を払いのけ、大きく飛び退いた。
そうして初めて、自身の呼吸が、大げさなくらい荒くなっていることに気づく。
(嘘でしょ……何でアレ喰らって立てんの!?)
ひとまず、自分の血を鎌に吸わせつつ戦慄する桜田。
彼女の目は、頭頂部から真っ赤に染まる女に、化け物を見るような視線を送っていた。
「どうしたの? もっと威勢よく来なさいよ」
浴びた血液を輝かせ、刃を構えた女は、
「さっきみたいにねぇ!」
再び関節剣を暴れさせる。蛇のようにのたくる斬撃が、辺りの粗大ゴミを散らしながら、重症を負った少女に飛びついた。
それを避け、ゴミ山の陰を伝うように逃げる桜田は、
(マズイよ……血ぃ出しすぎたし……!)
さらに息を乱し、自らの心を焦りで満たす。
とにかく止血しなければならないが、桜田は回復系の魔術を使えない。
治癒魔術の使用には、人体に関する知識が必要だが、あいにく彼女には、そこまでの知識がないのだ。
重度の貧血状態の中、
「……」
桜田は、山の陰に身を潜めてしゃがみ込み、必死に考えを巡らせる。
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