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そして、
「たぁっくみ~~~!」
黄色い声を上げながら、山吹色の和服を纏った、小さな体で飛びついた。ふくらはぎまで伸びた黒髪が、柔らかに宙を踊る。
泣く子も黙る生徒指導員・朱鷺沢 時音(ときざわ ときね)である。
歳相応(?)の笑顔を浮かべる彼女を、優しくしっかりと抱きしめながら、
「ただいま。元気だったかい、時音」
よく響くアルトボイスで尋ねる、その人物。
桜峰魔術師学園の理事長にして、二条院家の現当主──二条院 巧美(にじょういん たくみ)である。
「うむ! 巧美こそ大丈夫か? 薬を飲み忘れてはいないか、毎日心配しとったんじゃぞ?」
「あっはっはっは。実は三、四回飲み忘れてしまってねぇ。参ったよ」
腹の辺りまでしか届いていない頭を、嬉しそうに撫でる理事長は、笑顔を絶やさない。
ひとしきりじゃれ合った後、時音は理事長のキャリーケースを、机のそばに運びながら尋ねる。
「オックスフォードはどうじゃった?」
「良い街だったよ」
一方の理事長は、自分の机に座りつつ答えた。
「魔族に対する理解もあるし、ロンドンに次ぐ魔術都市に発展するかもしれないな」
どことなく満足げだ。
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