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「それに、魔術校を創設する計画もあってね。その時は、ぜひ姉妹校になってほしいと言われたよ」
「ほぅ! 今回は朗報ばかりではないか!」
テンションの高い時音に、理事長はふっと微笑みかけた直後、
「しかし……日本(こっち)は良いことばかりではなさそうだね」
小さなため息と共に言った。
その目は、机の上に置かれた日本の朝刊を、じっと見下ろしている。
「む……ああ」
新聞を置いた張本人である時音は、今まで浮かべていた笑みを消し、真剣な顔になる。
「『教団を隠れみのに、違法研究を行っていた貴族が摘発』……じゃったか?」
「そうだ。ずいぶん小賢しい方法を考えたものだよ、まったく」
呆れ果てたように言葉を繋いだ。
「教団は、反魔術を掲げる団体だからね。警察ならともかく、自警団の魔術捜査のメスは、非常に入りにくい。
違法な研究を行っている魔族にとって、これほど都合の良い研究所は、なかなか無いだろう」
言いながら、理事長は右手の人差し指を動かす。
カップやポットが独りでに紅茶を入れ始め、応接用のソファーが宙を舞い、机のそばに落下した。
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