78162人が本棚に入れています
本棚に追加
二十秒強で紅茶を入れ終わった理事長は、ソファーに座った時音にカップを流す。
そして、自分も一口すすってから、
「……などと言ってみても予想外だよ。まさか、貴族と教団が手を組むとはね」
悩ましげに言った。
「こういう騒ぎは、一つ起こると周りに広がるからな。二条院家にも調査団が来るだろう。
調べが長引いて、学園の運営に支障をきたすような事態にならなければ良いんだが……」
「何を言うか、巧美!」
わずかに顔を伏せる理事長を、ソファーに座る時音が励ます。
「二条院家には何の汚点もなかろう! ならいつも通り堂々としておれば良い! そうじゃろう?」
微妙に論点がずれているが、彼女が励ましてくれた、そのことに対して、
「そうだな。ありがとう」
理事長は礼を言った。
が、
「それと……話はだいぶ変わるんだがね」
柔らかな微笑みを瞬く間に消し、鋭い目で時音を射抜く。
「彼……神崎君の様子はどうだい?」
「……今のところ、問題はなさそうじゃ」
『今のところ』を強調する時音は、呆れたような困ったような、微妙な顔をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!