プロローグ.帰還

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二十秒強で紅茶を入れ終わった理事長は、ソファーに座った時音にカップを流す。 そして、自分も一口すすってから、 「……などと言ってみても予想外だよ。まさか、貴族と教団が手を組むとはね」 悩ましげに言った。 「こういう騒ぎは、一つ起こると周りに広がるからな。二条院家にも調査団が来るだろう。 調べが長引いて、学園の運営に支障をきたすような事態にならなければ良いんだが……」 「何を言うか、巧美!」 わずかに顔を伏せる理事長を、ソファーに座る時音が励ます。 「二条院家には何の汚点もなかろう! ならいつも通り堂々としておれば良い! そうじゃろう?」 微妙に論点がずれているが、彼女が励ましてくれた、そのことに対して、 「そうだな。ありがとう」 理事長は礼を言った。 が、 「それと……話はだいぶ変わるんだがね」 柔らかな微笑みを瞬く間に消し、鋭い目で時音を射抜く。 「彼……神崎君の様子はどうだい?」 「……今のところ、問題はなさそうじゃ」 『今のところ』を強調する時音は、呆れたような困ったような、微妙な顔をしていた。
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